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Thank You For Everything          ~100%のスマイルを求めて~

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広汎性発達障害の社会性の発達支援の実際







広汎性発達障害の社会性の発達支援の実際
NPO法人アスペ・エルデの会知多支部ディレクター
中京大学心理学部助手
明翫光宜


1.社会性の発達

    社会性
=社会の規範や慣習などに適合した行動がとれること
=対人関係能力

社会性はいくつかの層をなしており、対人関係や自身の能力の発達に支えられて発達していく(杉山、2005)
 ・愛着形成(社会性の最も基盤となる層)
  ・社会性の最も基盤となる中核といえる層
  ・愛着対象(養育者)との感情や注意の形成(一体感←→感情の交流)
  ・愛着形成の結果としての自己意識の形成
   ・感情の意味を理解できる
   ・自他の区別
     相手を自分に重ね合わせる

 ・気持ちのコントロール(衝動のコントロール)
  ・自分の欲求や衝動を抑制して、社会的ルールや規範を理解し、それに従えること
  ・しつけという社会的行動規範というモデルが与えられ練習すること

 ・視点を自分から他者へと移動できること
  社会行動における相対性
  ・自分と相手との相互的な関係が把握できる(高学年、丁寧語)
  ・視点の移動:自分の視点から相手の視点へ

2.広汎性発達障害の社会性の問題
 □人への関わりが一方的になりやすい
 □柔軟にその場その場にふさわしい行動をとることが難しい
 □自分の感情を気づきにくい
 □感情を共有することが難しい

3.広汎性発達障害の社会性を育ちにくくしている要因
 □感覚の過敏性
 □情報処理のユニークさ
  ・モノトラック・マルチトラック
 □情報を統合することの難しさ
  ・シングルフォーカス
 □他者の意図を自然に読み取ることの難しさ
  ・心の理論
 □時間体験の特異さ

4.広汎性発達障害の社会性の発達
 広汎性発達障害は、適切な支援を早期から継続して受けると、苦手さを持ちながらも様々な能力を伸ばしながら成長していく。

 年齢   社会性の構造      支援の方向性
乳幼児期   愛着          愛着形成
幼児期   衝動のコントロール    枠居れ
                      ・集団の中に居られる
                      ・最低限のルールに従えられること
学齢期   相手に合わせること    ソーシャル・スキルトレーニング
         視点の移動

5.社会性の発達支援
 □まず社会性を育てることを難しくしている要因を考える。
 □なるべく難しくしている要因を減らし、彼らが理解しやすいような環境を作る(環境調整)。
 □彼らの認知そのものを変化させるのではなく、独自の認知をもっているという前提(異文化)で、多数派(定型発達)の認知の仕方(常識)を知識をして学んでもらうスタンツ
 □実際にその子がどんな状態にあるか、どんな力があるかを評価する(アセスメント)
 □その子の状態にあった社会性の課題や発達支援プログラムを提供する。
 □社会的スキルという観点
 社会性を「スキル(技術)」として、教えていく方法。
 不適切な行動は、社会的な状況での情報がうまくキャッチできなかったり、理解できなかったりすることから生じやすい。
 それをわかりやすい形で提示してあげる工夫。

 (1)ソーシャルストーリー
 広汎性発達障害の子どもにとって困難な社会的状況を記述したもの。
 (2)コミック会話
 ことばの背景に隠された相手の意図や会話における役割を視覚化することで、コミュニケーションの状況理解に関する認識を高めたり、自分の状況を他者に伝えられるようにする。
 (3)ソーシャル・スキルトレーニング
 ・経験は必要。でもただ経験の量を増やすだけでは不十分である。
 →不適切な振る舞いを経験することが多い。
 →学習・固定してしまうことがある。
 ・振舞うべき行動を具体的にわかりやすく。わかりやすい補助手段を考える。
 ・本人に試行錯誤させるよりは、最初に明確な指示や手がかり、モデルを提示してあげる。

6.支援がうまく機能するために
 □技法よりも大事なのは、子どもと支援者との信頼関係(関係性)
 1.良い行動が出来たら、しっかりと評価をしてあげる。
 2.評価するタイミングが重要。
 □その子に合った課題・プログラムの設定
 1.その子の状態に合わせて必要な技法を用いてスキルの獲得の機会を提供する。
 2.新しいスキルは、細かく簡単なステップにわける(スモールステップの原則)。

 参考文献
キャロルグレイ(著)服巻智子、大阪自閉症研究会(翻訳)2005 ソーシャル・ストーリー・ブック―書き方と文例 クリエイツかもがわ
ソーシャル・ストーリー・ブック

キャロルグレイ著 門眞一郎訳2005 コミック会話―自閉症など発達障害のある子どものためのコミュニケーション支援法 明石書店
コミック会話

杉山登志郎2005 学童期における心と脳の発達 そだちの科学(4号) 日本評論社
そだちの科学(4号)

ドナ・ウィリアムズ(著)、河野万里子(訳)1993 自閉症だったわたしへ Nobody Nowhere 新潮社

自閉症だったわたしへ


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